感想:「刀語」シリーズ 「刀語」シリーズ 全12巻(著:西尾維新、講談社BOX) 刊行当時、半ばまで読んでいた記憶があるが、機会があったので一から読み返してみた。 評価基準の重点をどこに置くかで評価が非常に変わる作品。 12ヶ月に渡り連続刊行という背景と、12巻で綺麗に完結する構成からみれば佳作。前例があるかは知らないが、過密なスケジュールの中で物語を描き切る試みに対する賞賛は十二分に与えられて然る出来。冒険活劇の物語構成を描く際の下敷きとして採用するには適当か。シンプル故の構造美がないわけでもない。 一方、単純に一つの娯楽作品としてみれば、絶え間ない説得力不足と余りにも雑な展開に辟易を禁じ得ない。結末部は私的に好みではあるが、「終わり良ければ全て良し」とはならない程、過程が酷い。また、説明不足であるのに、字数稼ぎにしかならない状況整理の説明文が多用されているのも残念。 朧気ながら掛け合いが上手な作家と記憶していたが、本作はコメディの感性が終始合わなかった。 ライトノベルというジャンルの要点であるイラストへの面でも、過密なスケジュール故かデザインは兎も角、状況描写の不足が甚だしいのが難点。 PR