感想:「海神別荘」 「海神別荘」(著:泉鏡花) 海中の世界に暮らす妖怪と唯美主義を題材にした戯曲。 芥川の「河童」も同じ構図だが、異世界と人間世界とを対比して表現することで我々の普遍的な価値観に疑問を投げかけている。 本作には社会批判的な側面がないわけではないが、これは殊更人間社会を貶める意図によるものではなく、物語の舞台が唯美主義という観点に於いて価値判断のノイズとなる見栄や驕りの及ばない理想郷であることを示しているものと思われる。 読者の視点としては、戯曲作品として舞台上の演出を考慮した表現となっている為に場面を想像しやすいこと手伝って、唯美主義的理想を突き付けられて当惑する印象が強い。これは物語としての起承転結、特に結末部分の主張に乏しいためだと思われる。 PR