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感想:『文体練習』


『文体練習』(著:レーモン・クノー 訳:朝比奈弘治、朝日出版社)


 「バスの中で諍いを起こしていた男を、その後別の場所で見かけた」という事象を多種多様な文体で表現することを試みた作品。
 日常の中の些末な出来事も多様な表現方法を用いることで多様な景色となるのが面白い。
 紹介されている表現の中では「遡行」がお気に入り。マット・マドンの『コミック 文体練習』を読んだ時も感じたが、「過去に遡った後に語り手のいる現在へ終着する」という形式が何やら収まりがよくて好きらしい。
 言葉遊びとしては一々同音異義語と区別するための注釈が入る「区別」や昼⇔真夜中のように対義語に置き換えた文章とする「さかさま」、文体の中では「俗悪体」などが風変わりで面白かった。
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