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感想:「河童」


河童」(著:芥川龍之介)



 分類するなら異世界滞在記であるが、「僕は後ろを振り返ってみた。が、もちろん机の上には花束も何ものっていなかった。」と物語の聞き手が述懐している為、河童の国というものは語り手である精神病院の患者「第二十三号」の妄想が少なからず含まれていると示されている。
 政治はもちろんのこと科学や哲学、文学など文明としては人間と比肩するほどに発達しているにも拘らず、職工屠殺法によって失業者を食肉にすることが公に認められていることなど、一般的な人間の価値観との間に大きく隔たりがあるのは興味深い題材だと感じた。
 物語の流れとしては、芥川が得意とするニヒリズム的な批判や精神活動の苦悩に傾注していくが、自殺した河童の幽霊に対する質疑応答(唐突な幽霊への変質は「芋粥」同様にゴーゴリの「外套」のオマージュだろうか)など、世界観を持て余しているように感じる部分も多いように思う。
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