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感想:『首無しの如き祟るもの』


『首無しの如き祟るもの』(著:三津田信三、講談社文庫)


 奥多摩の山村、媛首村を舞台に戦中・戦後に跨って起きた首無し殺人事件を連載小説の体で書かれた作品。
 著者となる人物は事件の捜査に当たった巡査の妻で、執筆の目的を「事件の真相を明らかにすること」としている。


 以下、少々のネタバレを含む。

 雑感としては「ミステリー小説としては非常に構成に凝った良作」。

 作品の構成上自ずと発生する「過去の事件」、「小説として書かれた巡査の視点」、「小説として書かれたある主要登場人物の視点」、「連載小説として発表されている現在の視点」の4つの世界が作品に十二分に活用されていることは純粋に称賛に値する。
 出題編の範囲までは主題となる事件についても複雑になり過ぎず、登場人物の立場を生かして未解決の謎の焦点が整理されるため読者への配慮が行き届いていると感じた。

 一方、最終盤の解答編に入ると、それまでの構成が整っているだけに粗が目立つ。
 犯行の動機や言行の不自然など、真相を補強するための伏線が多い為、一応の説明がついてはいるが、ご都合主義的な感が強いものも少なくはなかった。
 物語の著者である「高屋敷妙元」をはじめ、登場人物にミステリー作家およびそれに類する立場の人間が多いが、該当人物の心理に対する読者の許容度への想定が甘い。具体的には、作家だから○○という思考をする、○○という点を気に掛けるというこじ付けが多く、納得はできるが作者の偏見、独りよがりの印象も抱いた。

 ミステリー小説に頻出する批判である人間味の欠如は、時代背景や閉鎖的社会、作中作という体裁を提示することで一応回避できているが、心理描写が薄くなり、後の推理の説得力に悪影響を与えている。

 最終章の仕掛けは意外性こそ大きく、ミステリーとホラーの共存というテーマに繋げる為に必要な展開だったとはいえ、テーマの提示以外の効用が中途半端で謎解きおよび必罰のカタルシスを損なわせている。

 個人的にはよいミステリー作品の条件に「真相を理解した上で何度読み返しても楽しめること」を挙げたいが、本作についてはエンターテイメントとして細部の粗が目立つ為に二度、三度読んでも十分に楽しめる作品ではない。
 だが、構成の難易度および二重、三重の意外性を編み出した発想と努力は様々な減点を払拭するに足る評価点だといえる。故に、ミステリーとしては良作という評価が妥当と思われる。
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