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感想:「山椒大夫」他


『山椒大夫・高瀬舟』(著:森鴎外、新潮文庫)


■ 収録作品
・「杯」
・「普請中」
・「カズイスチカ」
・「妄想」
・「百物語」
・「興津弥五右衛門の遺書」
・「護持原院の敵討」
・「山椒大夫」
・「二人の友」
・「最後の一句」
・「高瀬舟」
 「高瀬舟縁起」

 「普請中」や「カズイチカ」「百物語」等当時台を舞台としている作品は独逸・仏蘭西を主とした西洋への羨望が衒学的な調子で色濃く出ており、集団に同調する日本的精神への批判めいた視点も相まって個人的には余り好ましくなかった。考えを述べるにあたって外国語をそのまま用いるというのが語り手として片手落ちの印象を受けるのも一因だろう。
 安楽死という問題提起として最も世に知られているテキストであろう「高瀬舟」や、困難極まる仇討の行く末を描いた「護持院原の敵討」などは歴史資料を基底とした作品ではあるが、その着眼点や表現力は感心足り得るものである。
 会話文は余り感情的なものがないが、「わたくしの杯は大きくはございません。それでもわたくしはわたくしの杯で戴きます」という「杯」の西洋人と思しき娘の台詞や、「最後の一句」の父の死罪を免れるために自らと弟妹の命の差し出そうと奉行世に直訴する長女いちの「お上の事には間違はございますまいから」という台詞などは、それだけで物語の本質を規定せしめる程の強さを感じた。
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