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感想:『かわいい闇』


『かわいい闇』(作:マリー・ポムピュイ,ファビアン・ヴェルマン、画:クラスコエット、訳:原正人 河出書房新社)


 2009年にフランスで発行させたバンド・デシネというジャンルの作品の邦訳版。
 「描かれた帯」の意であるバンド・デシネはフランス・ベルギーを中心とした地域の漫画のことを指す。バンド・デシネの中では『タンタンの冒険』などが日本でも比較的メジャーな作品と思われる。

 『かわいい闇』は写実的な自然や人間、動物と抽象的・漫画表現的な小人(或いは妖精)によって織りなされる物語作品。
 森の中で死亡した少女の崩壊する体内から何人もの小人が逃げ出してくる場面という余りにも衝撃的な場面から物語は始まり、無邪気を体現し善悪の区別もなく自由に振舞う小人の愛らしさと恐ろしさの対比を描いている。
 生命の尊さすら自覚していない幼い小人たちの暮らしの中では何度も残酷かつ暴力的な場面がでてくる。快と不快によって殺害さえ行われるがそれを裁くことはできないし、裁くべきでない純粋な美しさを感じた。

 司法や倫理観の重要性というものは逆説的なテーマの一つといえるが、それ以上に人間という種の原罪や、他者と友好を築くことの本質的な難しさを考えさせられた。
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