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感想:「人間腸詰」


人間腸詰」(著:夢野久作)



 「世界が丸いお蔭で、あっしが腸詰になり損なった話」という冒頭の一節に興味をひかれるが、内容としては、博覧会に出展するカフェを建てる為にアメリカに渡った大工が些細なことからギャングに目を付けられて窮地に陥るが、洋行の精神的疲弊を切欠とした幸運により生還を果たすというもの。
 帰りの船の中見つけた缶詰の中から、偶然にも女の髪の毛と紙の切れ端が出てくるのは作り話の感が出過ぎているが、腸詰となった犠牲者を出すことが「特別誂えの大きな肉挽器械」がただの脅しではなかった事の証明として必要な要素であるとも考えられる。
 事件のあらましについて、海外旅行が一般化された現代からしてみればやはり現実味がないが、発表年である昭和11年(1936年)からすると、独白体形式の効果が十分に発揮された恐ろしい旅行の体験談となったのだろう。
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